こんにちは福岡在住の管理人医師kinoppiです。
しばらくブログ記事の更新をしてませんでした。
夏になり暑くなったこともあり、BBQや花火が旬ですね!
最近外来にてやけどについて聞かれることが多くなったので今回はやけどについて解説していきたいと思います。
やけどのひりひりやちかちかした痛みの期間や処置、治し方について医療従事者の視点から解説していきます。
最初はやけどについての説明なのですぐ、治療方法を知りたい方は飛ばして読んでください。
それでは解説していきましょう。
やけど「熱傷」ってなに?
やけど「熱傷」の概論について説明します。
まず皮膚は体温調節、体液維持、感染防御さらに知覚などの機能をもっています。
大きな範囲のやけどをすると皮膚の破壊が生じると循環、呼吸、代謝、免疫などの機能が損なわれ全身に大きな影響を及ぼします。
局所的なやけどの場合は皮膚の瘢痕(はんこん)が生じて関節の動きが悪くなったり、変形や痛みが生じ、まれに瘢痕組織の癌化が起こることもあります。
また皮膚はやけどの深さによって皮膚の状態が変わってくるので皮膚を3層にわけて考えます。
どのように分けるかというと。
皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3つに分けます。
皮下組織の下が筋肉、その下が骨です。
やけどの分類はそこから真皮を浅層と深層の2層に分けます。
なぜ真皮を2層に分けて考えるのかというと皮膚の瘢痕(皮膚が突っ張って伸びない状態)が起こってくるのが真皮の深層より深いところでやけどにより起こってくるからです。
真皮の深層とは毛根があり、汗腺や毛細血管があるところです。
ではやけど「熱傷」による見た目はどのような状態なのでしょうか?
やけどの見た目によって重症度を判定しよう!
まず、皆さんがよく目にするやけどは皮膚が赤くなったり(発赤)、水膨れ(水泡)ができている状態だと思います。
この二つの状態は表皮と真皮のやけどによって起こってきます。
またそれより深いとどのような状態になるかというと、皮膚の血液の流れが失われて真っ白になります。
血の気が引いて顔が真っ白になることを顔面蒼白といいますが、まさにそのような状態が起こります。
また神経は真皮深層から皮下組織を通っており、やけどの範囲で痛みの度合いが変わってきます。
俗にいうひりひりとした痛みは皮膚から真皮浅層までのやけどのことをいいます。
それより深いと灼熱感や皮膚の感覚がにぶくなるような状態になります。
また、皮下組織までやけどが進行してしまうと皮膚が死んでしまい水膨れすらも起きません。
表にまとめると以下の状態です。
・表皮:発赤、紅斑、ひりひりとした痛み
・真皮浅層:水膨れ(水泡形成)、ひりひりとした痛みや灼熱感
・真皮深層:水膨れ(水泡形成)、蒼白、感覚が鈍くなる(知覚鈍麻)
・皮下組織:蒼白、感覚がなくなる(知覚脱失)
蒼白の場所とは水膨れが破れた後の下の皮膚の状態です。表皮の部分ではありません。
よく長時間お風呂に使っていると皮膚が白くふやけてしまうことがありますよね?それが表皮です。
友人が水膨れの一部が白いのを見て壊死だーっていって叫んでたので 笑
またやけどには分類があり表皮のみをⅠ度熱傷、真皮までをⅡ度熱傷、皮下組織をⅢ度熱傷と分類します。
やけどがヒリヒリして痛いのはいつまで?
さて長々とやけど(熱傷)について説明していきましたがそれでは本題に入りたいと思います。
やけどがヒリヒリ痛むのは皮膚の近くには神経が走っていてやけどの熱が伝わるからです。
痛みの期間については賛否両論ありますが、皮膚がある程度治ってくるまではヒリヒリ痛みが続く可能性があります。
またやけどした直後は深さが分からないことが多く、2.3日たった後に水膨れができることもあり初診時には明確な治療期間が分からないことが多いです。
そしてやけどの深さによって回復するのに時間が変わります。
赤みや水膨れであれば数日から約1~3週間程度で治ることが多いです。
もっと深いやけどだと皮膚移植が必要になり数か月の治療が必要になることもあります。
ではやけどの深さによる期間を分類してみたいと思います。
Ⅰ度熱傷:表皮
表皮のみで皮膚が赤くなっている状態です。
水膨れもなく赤みだけの状態であり、基本的には数日で痛みはなくなることが多いです。
赤みが強く痛みがある場合はステロイドなど炎症を抑える作用がある軟膏を塗っておけば痛みも軽くなります。
やけどの色素沈着はしばらく続くこともありますが約1週間程度で治ることが多いです。
Ⅱ度熱傷浅度:真皮浅層
水膨れができている状態です。ひりひりとした痛み以外に、灼熱感を伴っている場合があります。真皮深層との違いは感覚が鈍っていないことです(つまり痛みがはっきりしています)。
痛みの期間もⅠ度熱傷と同じで数日で痛みは軽くなります。
水膨れ(水泡)の状態であれば皮膚が再生する期間の約2~3週間程度で治療ができます。
ただし、数日で痛みは軽くなるといいましたが、傷が乾燥したり、消毒による痛みであったり、くっついたガーゼを剥がすときに痛みを伴うことがあります。
傷の付け替えの時にそのような痛みが少なくなるようにきちんとした処置を心がけましょう。
後に記述していますのでチェックしてくださいね。
Ⅱ度熱傷深度:真皮深層
水膨れができている以外に、皮膚が真っ白くなっているところが目に付く状態です。
皮膚が白いところは壊死しており、皮膚移植が必要になってくる場合もあります。
痛みの期間に関しては神経が焼けているところは感覚が鈍っており、痛みがないことが多いです。むしろⅠ度やⅡ度浅度が混在しておりその痛みがあることが多いです。
そして深いやけどの場所は移植することとなり、数日から2週間以内に間に手術を行います。やけどの範囲が大きいと数回にわたって行うこともあり。
約1~2か月の治療が必要になってくることもあり、その治療期間中は痛みが続く場合もあります。
Ⅲ度熱傷:皮下組織
皮膚が壊死してしまった状態です。
水膨れもできませんし、感覚は完全になくなっています。
なので痛みはありません。
痛みの期間は神経が回復してくると痛みが出てくる場合もありますが、主にⅠ度やⅡ度浅度が混在しているところが痛みます。
移植が必要になってきたり、リハビリが必要になってきたりと治療期間も長いです。
処置や治し方はどうしたらいい?
まず痛みを伴う原因として
・消毒による痛み
・傷が乾燥する痛み
・引っ付いたガーゼを剥がすときの痛み
この3つが痛みの原因の主となります。
となればこれを防ぐことが痛みの軽減につながるということです。
ここでふと疑問に思われる方もおられると思います。
消毒?ってしなくていいの?って
実は消毒は読んで字のごとく「毒を消す」です。
毒を消せるような物質ってことです。
ということは少なくとも人体に良い影響があるとは思えませんね。
消毒を傷に使うとどうなるかというと
消毒薬は蛋白質を変性させて殺菌する
→細菌の蛋白質も人体の蛋白質も変性させる
→創面を消毒するとばい菌も死ぬが人体細胞も死ぬ
ということになるんですね。
つまり消毒をすると傷の治りが悪くなるんです。
じゃあどういったときに使うのかといえば皮膚表面の雑菌を殺す場合に使います。
採血の時や注射をするときに体内に皮膚のバイ菌が入り込まないように消毒したり、傷を縫った後に皮膚表面のバイ菌を殺す目的で使います。
決して水膨れを破った後に使うことは痛みを伴うだけではなく再生を遅らせる可能性につながるので注意してくださいね!
では適切な処置ってどうしたらよいんでしょうか?
処置の仕方
やけどの適切な処置とは冷やすことと洗うことです。
流水でしっかり冷やし、洗ってください。
冷やすことで拡張した血管を収縮させ赤みが引きやすくなります。
赤みが引くことで熱が引き、また痛みも軽減します。
そして流水で洗うことでやけど周りのバイ菌がある程度おちます。
特に皮膚は乾燥すると再生能力が落ちてしまいますのでしっかり洗ってください。
ただし氷や氷水は控えてください。
極端に冷やしすぎると細胞が死んでしまい皮膚の再生能力が落ちてしまう可能性もあります。
そして水膨れができている状態は皮膚が弱い状態であり、氷による低温熱傷を引き起こしてしまう可能性もあるからです。
冷やす時間は15~30分程度を目安にしてください。
冷やしすぎたら5~10分程度時間をあけてまた冷やすとよいです。
1時間もすれば軽いやけどであれば痛みが軽くなります。
では痛みが軽くなった後に行う治療について解説していきます。
治療の仕方
まずは水膨れ(水泡)ができているかいないかによって治療が分かれます。
出来ていない発赤の場合は炎症を抑えるステロイド入りの軟膏を使うとよいでしょう。
なければワセリンでもよいです。
※皮膚が乾燥することで傷の治りが遅くなるのでワセリンなどの軟膏でもよいんです。
では水膨れ(水泡)ができている場合はどういった処置を行った方がよいのでしょうか?
水膨れは極力破らない方が良いです。
破るとバイ菌が中に入り感染をきたす恐れがあるからです。
しかし、パンパンに張った場合は知らないうちに破れる可能性もあることから、その場合は針で穴をあけて皮膚を破り、中の水を抜いたりします。
場合によっては破った皮膚を取り除き、流水で洗ったあとにワセリン等の軟膏を塗ります。
その後は傷を覆うことになりますが、ガーゼだけで覆ってしまうのには注意してください。
ガーゼだけで覆ってしまうと皮膚がガーゼに張り付いてしまい、傷の治りが遅くなるばかりではなく、剥がすときに出血したり痛みを伴う場合があります。
ガーゼの役割は主に余分な浸出液(しんしゅつえき:傷を治すときにでるじゅくじゅくした液体)やバイ菌を吸収する役割があります。
ガーゼを直接当ててしまうと傷の表面の浸出液を全部吸収してしまいます。
人の細胞がせっかく傷を治そうと頑張っているのに邪魔をしていることになるんですね。
なのでガーゼに皮膚が直接当たらないような工夫をしましょう。
1つはたっぷりと軟膏を塗ることです。
軟膏をたっぷり塗ることによって、皮膚とガーゼの間に膜ができます。
もう1つはガーゼと皮膚の間に保護剤を置くことです。
湿潤療法って検索するとラップ療法って出てくると思いますが、医療機関で使用している特別な保護剤がない場合は私もラップ療法はよいと思っています。
なぜかというと安価でどこでも手に入るからです。
※ただし後述しますがなんでもラップ療法でよいってわけではないので注意してください。
極端にいえばラップを張っている状態は水膨れ(水泡)ができている状態と同じです。
傷を治す働きがある浸出液を閉じ込めている状態です。
しかしながら、一度水膨れ(水泡)を破ってしまうと皮膚の表面にあるバイ菌が入り込んでしまうので全く同じ状態というわけにはいきません。
なのでラップに針や爪楊枝などで穴を開けた状態でガーゼで覆うと、浸出液(しんしゅつえき:傷を治すために溜まった液体)とバイ菌を程よくガーゼで吸収してくれます。
あくまでもガーゼのみで覆ってしまうと皮膚にくっついて剥がすときに痛みを伴うだけではなく時に出血を引き起こす場合があるので注意してくださいね。
塗る軟膏は何でもよいですが水膨れを破った後の皮膚はバリアーなくなるためにバイ菌が繁殖しやすい状態であるためステロイド剤は使用しない方がよいでしょう。
ステロイドは抗炎症作用以外に栄養の役割もあるためバイ菌が繁殖する可能性があります。
バイ菌は常に繁殖しているので傷の付け替えは毎日行うことを推奨します。
何度もいいますが傷を洗うのは流水でよいです。消毒はやめてくださいね。
流水で流すことでバイ菌は流れ落ちます。
私が外来で行っているのは軟膏や浸出液をよく落とすために泡石鹸で傷口を優しく洗った後に流水で流しています。
また医療機関の場合は特別な創傷保護材(デュオアクティブET、ハイドロサイト剤)がありますのでもちろんラップは使いませんよ。
市販で買える保護材としてはキズパワーパットが医療現場で使われている保護材と同じ役割があります。
傷を乾燥させることがないため傷の治りがよく綺麗に直してくれます。
傷跡も残りにくいです。
ラップはダメだとの報告もありますが、しっかり洗って清潔にしていれば問題ありません。
ダメなのはそのまま放置してバイ菌が繁殖してしまった場合と壊死した皮膚に使用する場合です。
バイ菌が繁殖した状態を放置すると皮膚が壊死してしまう可能性があります。
壊死した皮膚は白くなります、そのままにして置くと壊死の範囲が広がってくるので皮膚を切りとらないと治りません。
同様にⅡ度深度、Ⅲ度熱傷など、もともと皮膚が壊死している部分にラップ療法を行ってもそれだけでは治りません。壊死した皮膚は基本的に取り除いて正常な皮膚のみにすることが再生を促します。
※医療機関では壊死した皮膚の再生を促進するようなスプレー剤もあります。
なんか色がおかしいなって思ったらすぐに医療機関を受診してください!
1度も医療機関を受診しないってことだけはやめてくださいね。
あくまでもすぐに医療機関を受診できない方や頻回に受診できない方を対象として説明しています。
自己判断で治療されていた方で壊死をほっといたために、その後数ヶ月にわたり治療が必要になった方もおられますので、皮膚の状態の判断は医師にしてもらってくださいね。
最後に
今回やけどの処置や治療について解説していきました。
色々な情報がある中で私の記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回、私が書いたやけどの治療に関しましては私自身の経験をふまえての内容であることから賛否両論あり100%の正解では無いのかもしれません。
これからもより良い治療を提供させていただけるように努めていく次第です。
分かりづらい内容や詳しくお聞きされたいことがあればご意見いただけましたら、また詳しく解説します。
皆様の知識の一つとして考えていただければ幸いです。