こんにちは管理人のDr.kinoppiです。
ようやく日差しが強くなり気温が上がってきましたね。
休日は外に出て活動される方が多くなってきている時期ではないでしょうか?
最近に始まったことではないのですが、外来ではよくぎっくり腰の患者さんが来られます。
力仕事や長距離運転手、農作業をされている方と様々です。
また中には腰から背中にかけての痛みで受診される方もちらほらいます。
先日、友人と久しぶりに飲みに行った際によく「ぎっくり背中」になって困っていると相談を受けました。
朝起きた時に突然背中に痛みが出たそうです。
馴染みのない言葉の方もおられると思いますが今回「急な背中の痛み」について友人の体験談を含め原因や治し方について解説していこうと思います。
どこで治療すべきなのか、また早く効果的な自宅でできるストレッチ方法についてもご紹介します。
ぎっくり背中の症状は?
よく聞くのは突然起こる背中の痛みです。
咳やくしゃみ、大笑いの動作で痛みが出たり
重たいものを持った時
寝返り
などきっかけは様々です。
寝ているときに突然背中にピキッという痛みが走り、痛みで動けなくなった
腰から背中、肩甲骨にかけて痛みがでた
背中の痛みに加えて太ももや足にかけてしびれがでる
痛みで呼吸が苦しくなる
といった症状を訴えられる方もおられます。
実際に私の友人MASATO君は
3年前から1年に一度の頻度で、起床時に背中に突然の痛みが起こるったいね。2~3日痛みが続くとよね。
最初は心臓かと思って内科に受診したっちゃけど、たらい回しに検査ば受けて、なんも異常はなかって言われ、ぎっくり腰の背中版って言われたったい。
これどうやったら治るとかいね?
なかなか博多弁が濃い友人ですが、要するに内臓系は異常がないと言われ、ぎっくり腰の背中版と診断されたようです。
ではぎっくり背中の原因は何でしょうか?
ぎっくり背中の原因は?
まず背中に起こる痛みの原因として内臓系から起こるもの、筋骨格神経系から起こるものに分けられます。
内臓系から起こる背中の痛みの代表的なものとして心筋梗塞、急性大動脈解離、尿管結石があります。どれも突然痛みが起こります。
その他、胃潰瘍や胃炎、膵炎などから起こることもありますが、その場合はお腹が痛くなった後に背中に痛みが来ることがあります。
代表的な疾患について簡単に説明します。
心筋梗塞(しんきんこうそく)
心筋梗塞は心臓の周りの血管が突然詰まる病気です。
痛みは主に左肩甲骨~肩に放散痛が走ります、左顎が突然痛くなり歯医者に行ったが原因が分からず医者にかかったら心筋梗塞だったと診断されるケースも稀にあります。
急性大動脈解離(きゅうせいだいどうみゃくかいり)
急性大動脈解離は大動脈という人間の大きな血管に亀裂が入る病気です。
高齢者に多く、動脈硬化が進行して血管が硬くなっている状態で血圧が上がると、硬い部分の血管が裂けてしまう病気です。
この病気は発症当時、息ができなくなるぐらいの背部痛があり動けないほどの痛みです。
尿管結石(にょうかんけっせき)
比較的若い人から高齢者まで幅広い年代で起こります。
お酒をよく飲む人やコレステロール値が高い人など結石の原因となる病態は様々です。
発症の誘因は脱水が多く、お酒を飲んで寝た後に起こることが多いようです。
腎臓内の結石が尿と一緒に尿管内へ排出されることにより、尿管内を石が通過する際に痛みを伴います。
そして病院で診断されるぎっくり背中の原因となるのは筋骨格神経系の病気です。
背中の内科以外の痛みの原因として筋肉性(筋膜性)、神経性、骨性に分けられますのでそれぞれ説明します。
筋肉性
筋肉性は一言でいうと「肉離れ」です。
ただしスポーツの肉離れなどで起こる肉離れとは違い、ごく一部の微細な筋肉の肉離れです。
肉体労働はもちろんのこと、デスクワーク・長距離運転手など長時間座っている姿勢などは筋肉が緊張している状態であり。
筋疲労のピークを迎えると痛みに変わります。
実際に友人に最初に痛みがでたのも転勤後の環境の変化で仕事が忙しくなっていた時期だったとのことで筋疲労が蓄積していたのだと考えられます。
簡単なメカニズムとしては同じ姿勢が続くと一部の筋肉が緊張し続けそこに乳酸が溜まり、筋肉の動きが悪くなります。そこから長時間の負担で筋肉に微細な断裂が起き、痛みが誘発されます。
これが「ぎっくり背中」です。
上の画のように僧帽筋下部繊維や大小菱形筋の微細な筋断裂によって背中に痛みが起こる可能性があります。
ただし整形外科の分野ではぎっくり背中とはいわず、場所によって肩甲骨周囲炎、○○筋損傷などと診断します。
神経性
神経性で考えられる病気は
椎間板ヘルニア
脊柱管狭窄症
肋間神経痛
です。
これは以前、別の記事で書いていますがヘルニアや脊柱管狭窄症は神経の通り道が狭くなり神経が圧迫されることによって起こる痛みやしびれです。
首や胸の神経が圧迫されると神経に沿った部位で痛みが起こります。
この場合、肩甲骨や背中に痛みが来る場合をぎっくり背中ということは少なく、多くは病名で診断されます。
ただし、肋間神経痛に関してはぎっくり背中といわれる可能性もあります。
背中の方に痛みがある場合は筋肉性との判断が難しい場合があるからです。
骨性
骨性は関節に起こってくる変形や炎症性の痛み以外に、骨折です。
骨折には骨粗鬆症やケガ、がんの骨転移などから起こる骨折があります。
背骨の骨折や肋骨骨折が考えられます。
これは突然に起こるというよりは転倒して尻もちをついたり、胸や背中を打ったりというような事がない限り起こる可能性は低く、この場合はぎっくり背中とは診断されません。
以上背中の痛みの原因についての解説でした。
ぎっくり背中の原因としてヘルニアや脊柱管狭窄症、筋肉の微細レベルの肉離れが考えられるということになります。
病院での診断はレントゲンやMRI、血液検査や尿検査と病状によって検査を行い診断します。
ぎっくり背中の治し方は?
よくネットをみると冷やす?温める?といったワードが検索されています。
冷やすや温めるは相反するワードです。
どっちが正しいのでしょうか?
答えは痛みの原因によって変わります。
例えば冷やすとは熱を冷ますことです。
スポーツ後によくアイシングするとよいと聞きますが、アイシングは熱を持った筋肉を冷やすことにより炎症が軽減し痛みをとるのに効果的です。
逆に温めるとは熱を加えることです。
これは血行を良くすることで筋肉が弛緩し、溜まった乳酸などの老廃物を排出させる役割があります。
ぎっくり背中の原因が過度なトレーニングによる筋損傷が原因だった場合は冷やすことも考えれれますが、多くは筋肉への疲労による微細な筋損傷による痛みです。
となると温めることを推奨します。
温めるとはお風呂に浸かることです。
シャワーはやめてください浴槽に浸かりましょう。
肩までゆっくり浸かることにより浮力、水圧、水温の働きで筋肉への血液循環を良くし疲労回復に効果的です。
週2回を目安に約42°のお湯に約10分浸かってください。
*夏場は41度でもよいでしょう。
またその他の治療として飲み薬やシップ、リハビリが効果的です。
リハビリでは筋肉が硬くなり動きが悪くなった部位をストレッチすることで血行がよくなり、痛みの改善につながり、また再発の予防にもなります。
シップや痛み止めの内服は病院で処方してもらうのもよいですし、市販の商品でもあるかと思いますがロキソニン、ロキソプロフェンが効果的であると考えます。
最後にストレッチをご紹介したいと思います。
ストレッチ方法は?
まず痛みが起きている場所によってストレッチ方法は変わってくるのですが、まずは腰から背中全体の筋肉をほぐすストレッチを定期的にしましょう。
ストレッチはゆっくり深呼吸を行いながら行ってください。
呼吸を止めてしまうと筋肉が緊張してストレッチ効果が半減してしまいます。
下記のブログでも紹介していますが
- 寝た状態で背筋を伸ばす。
- 両足を伸ばし、片方の膝を胸のあたりに持ってきて手で支える。(左右行う)
- 両膝を抱える。
1回の動作を30秒づつ計3回づつ行ってください。
次に肩甲骨周りのストレッチです。
ご紹介するのは座ってできる体操ですので仕事の合間にも休憩中にも行うとよいです。
座った状態で肩甲骨をぐっと寄せて開きます。
開くときは深呼吸を行い胸を突き出すようにしてください。
寄せるときは息を吐くとよいでしょう。
10回ほど行ってください。
次に手を肩にかけて肘を反対の手で押さえる、もしくは肘を組んで押さえます。
1回の動作を30秒、左右3回ずつ行ってください。
最後に脇腹、首のストレッチも行いましょう。
各動作を30秒行ってください。
30秒と赤文字にしているのは筋肉が一番よく伸びると推奨されているのが30秒だからです。
最後に姿勢にも注意しましょう。
日常生活の姿勢について
猫背の姿勢や前かがみの姿勢が続くと背中の筋肉の緊張が続き、ぎっくり背中の原因となりますので姿勢を正して生活してください。
最後に
今回、ぎっくり背中の原因や治し方、予防について解説しました。
隠れた怖い病気もありますので痛みが出て原因が分からないときはまず病院に行きましょう。