こんにちはまだまだ寒さが続きますね。
前回は腰椎椎間板ヘルニアと頚椎椎間板ヘルニアについて解説しました。
高齢者の代表的な腰痛の原因ともいわれる腰部脊柱管狭窄症
今回は腰部脊柱管狭窄症について症状や治療方、予防できるストレッチ、体操やリハビリについて解説します。
・症状
腰部脊柱管狭窄症は慢性的に痛みが続く腰の病気です。
腰椎椎間板ヘルニアとの違いは、腰椎椎間板ヘルニアは急に来る激痛に対し、腰部脊柱管狭窄症では腰痛はあまり強くなく、慢性的に軽度~中等度の腰痛が続き休んでいる時にはほとんど症状がありません。
動きに関しては腰を伸ばす動作や歩行、立位などで腰に負担がかかり、症状が増悪することが特徴です。
また長い距離を続けて歩くことができにくいことです。
10-15分程度の歩行で足腰が重だるくなり、休息をとると症状が軽減して歩くことができる症状で間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。
背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下に痛みや痺れが出ます。
症状は少し前かがみになったり、腰かけて休むと痛みや痺れが軽減されます。
しかしながら、進行すると下肢の力が落ちたり、肛門周囲の違和感や排尿困難や尿漏れをおこすことがあります。
・原因
好発年齢は60-70代です。
発症機序は加齢による背骨の変形、労働(農作業、力仕事など)、激しいスポーツ(ラグビーなど)、あるいは背骨の病気(側弯症・すべり症、圧迫骨折など)により背骨を支える椎間板の突出(ヘルニア)や周囲の軟部組織、変形した骨により神経が圧迫されて起こります。
・病態
脊柱管は背骨、椎間板、関節、靭帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。
年をとると背骨が変形したり、骨からの圧迫により椎間板が膨らんで脊柱管に飛び出ます。また背骨を支える靭帯が厚くなります。
飛び出た椎間板と肥厚した靭帯により神経の通る脊柱管を狭くします。
症状は神経が圧迫されることや血流障害がおこり脊柱管狭窄症が発症すると考えられています。
背骨の変性は年齢を重ねるごとに徐々に変形が進行し、それに加えて背骨を支えている靭帯も肥厚します。そして、腰が曲がって徐々に神経が圧迫されて起こる場合もあるため好発年齢も高くなっています。
よく腰椎椎間板ヘルニアとの違いを聞かれることがありますが、椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症は基本的には似た病態です。
背骨と背骨を支える椎間板が神経の方へ飛び出した状態を椎間板ヘルニアといます。
椎間板ヘルニアは飛び出した椎間板が枝分かれした神経が足へ向かう神経の通り道を圧迫した状態で
脊柱管狭窄症は飛び出した椎間板や背骨を支える靭帯の肥厚により脊柱管という神経本管を圧迫した状態のことをいいます。
元を言えばどちらも椎間板が飛び出て神経を圧迫した状態なのです。
・診断
問診や身体診察、レントゲンでは骨の変形やすべり症などを確認します。
特徴的な身体的特徴は慢性的な腰痛に加え、間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。
10-15分程度の歩行で足腰が重だるく歩けなくなり、休息をとると症状が軽減して歩くことができる症状です。
ただし、注意すべきポイントは高齢者の場合は動脈硬化による閉塞により血管性の下肢脱力、痛み、痺れが起こる場合があるのでしっかりとした診察が必要です。
見分け方のポイントとしては膝裏や足の甲で動脈の拍動が触れているか、足が冷たくなっていないか、足の色が悪くないかを左右差をみて判断します。
腰部脊柱管狭窄症の確定診断は腰のMRIを行い脊柱管の狭窄程度を確認します。脊柱管狭窄の程度は腰の前後の動きによっても変わってくるので場合によっては脊髄造影検査が必要になります。
動脈閉塞を疑った場合は上下肢の血圧を測ったり、動脈の閉塞を確認するために造営CTやエコー検査を行うこともあります。
・治療
保存治療としてコルセットの着用やリハビリテーション、痛み止めや脊髄の血行を良くする薬で症状が改善することが多いです。
しかしながら、歩行障害が進行し、日常生活に支障が出る場合は手術で神経の圧迫を取り除くこともあります。
手術は変形した骨を削ったり、除去したりするため金属での固定が必要になります。
手術のリスクは神経損傷、感染症、下肢静脈血栓症や手術部位からの出血による血腫での症状再発などがあります。
リハビリについて
リハビリは主にストレッチや歩行訓練、体幹筋力の強化を行います。
腰に負担がかからないようにするためには背骨を支える筋肉である腹筋、背筋がバランスよく鍛たわれていることが大事です。
しかしながら、日常生活で腹筋を使うことはあまりありません。
立つ動作、荷物を持つ動作は意識をしないと背筋を使ってしまいます。そうなると本来背骨の前を支える筋肉である腹筋が使用されていません。
腹筋は使わないと弱くなる一方です。これは骨の変形の原因となり脊柱管狭窄へつながります。
腹筋や体幹を鍛えることで背骨や背筋に対する負担が減り、腰痛の予防につながります。
またストレッチは腰回りや足回りの筋肉をほぐすことが大事です。歩行状態の改善も重要ですよ。
猫背になりがちの方注意してくださいね。腰に負担がかかるような姿勢だと疲労がたまるばかりで悪循環になるためです。
そういったリハビリを整形外科では行っていますよ。
あとは必要に応じて電気を当てたり温めて筋肉をほぐしたりします。
ストレッチや体操について
自宅で行えるストレッチや筋トレについては過去にも解説したことがありますが
ストレッチは下の絵のストレッチが効果的です。
大腿部の後ろの筋肉と腰の筋肉をほぐすストレッチです。腰の筋肉が硬くなるのを防ぎます。
やり方
1.仰向けになり、左足の膝を立てます。
2.息を吸いながら左足の膝を両手で抱えます。抱えている方の脚は力を抜きます。伸ばしている反対の右足は膝に力を入れて床を押すようにしてください。
3.息をゆっくり吐きながら、両手で抱えた左足を胸にくっつけるように引き上げます。この時腰が浮かないように、肩が床から離れないように気をつけます。30秒ほどストレッチします。
4.息を吸って左足をゆっくり戻し、吐いて脱力します。反対側も同様に行って下さい。
こちらも両足とも2-3セットずつやってみて下さい。
・日常生活の注意点
椅子の座り方:椅子は高いと腰に負担がかかるので、足が楽に組める程度の高さが良いでしょう。
寝る姿勢:寝るときは膝の裏に枕を敷いて膝が少し曲がった状態で寝るのが良いです。横向きに寝るのもよいでしょう。
神経の圧迫は腰をまっすぐに伸ばして立つと強くなり、前屈みになると和らぎます。
歩くときには一本杖やシルバーカーを押して腰を少しかがめるようにしましょう。
また、自転車での移動も痛みが起こりにくく、良い運動になります。
今回は腰部脊柱管狭窄症について解説しました。