【整形外科医監修】骨折を早く治すサプリメントはある?市販で選ぶときのポイントと必要な栄養素・摂取量を解説
「骨折をしたけれど、少しでも早く治したい」
「骨折後に飲んだほうがいいサプリメントはある?」
「カルシウムやビタミンDのサプリメントを飲んだほうがいい?」
「市販の骨折サプリメントは何を選べばいい?」
骨折をすると、このような疑問を持つ方は少なくありません。
骨折の治療では、ギプスや装具による固定、手術、リハビリテーションなどが重要ですが、骨の修復に必要な栄養素を十分に摂取することも大切です。
一方で、サプリメントについては注意が必要です。
「このサプリメントを飲めば骨折が早く治る」ということが医学的に確立されているわけではありません。サプリメントはあくまで食事を補うものであり、骨折そのものを治療する薬ではありません。
この記事では、整形外科医の立場から、骨折後に意識したい栄養素、1日の摂取量の目安、市販サプリメントを選ぶときのポイント、骨折を早く治すために注意したい生活習慣について詳しく解説します。
骨折を早く治すためにサプリメントは必要?
まず知っておきたいのは、サプリメントだけで骨折を早く治すことはできないということです。
骨折が治るためには、骨折した部分が適切な位置で安定していることや、骨折部周囲の血流、全身の栄養状態など、さまざまな条件が関係しています。
骨折の治療では、
- 骨折部を適切な位置に戻す
- ギプスや装具などで適切に固定する
- 必要な場合は手術を行う
- 医師の指示に従って患部を保護する
- 適切な時期からリハビリテーションを行う
- 十分なエネルギーと栄養素を摂取する
ことが重要です。
サプリメントは、この中の「栄養」を補助するものと考えるとよいでしょう。
特に食事量が少ない方や、特定の栄養素が不足している方では、必要に応じてサプリメントを利用することが選択肢になります。
骨折後に意識したい栄養素
骨の修復には、カルシウムだけでなく、タンパク質やビタミンDなど、さまざまな栄養素が関係しています。
ここでは、骨折後に特に意識したい栄養素を紹介します。
① タンパク質
骨折後に特に重要なのがタンパク質です。
骨はカルシウムだけでできているわけではありません。
骨の土台となる部分にはコラーゲンなどのタンパク質が含まれています。また、骨折後は活動量が減ることで筋肉量が低下しやすいため、十分なタンパク質を摂取することは、筋力や身体機能を維持するという意味でも重要です。
一般的な健康な成人では、タンパク質の推奨量は男性で1日65g、女性で1日50gが一つの目安です。
一方、骨折後や高齢者では、食欲低下や活動量の変化によってタンパク質が不足しやすくなります。
骨折後の栄養管理では、体重1kgあたり1.0~1.2g程度を一つの目安として考えると分かりやすいでしょう。
例えば、
| 体重 | タンパク質の目安 |
|---|---|
| 40kg | 40~48g/日 |
| 50kg | 50~60g/日 |
| 60kg | 60~72g/日 |
| 70kg | 70~84g/日 |
| 80kg | 80~96g/日 |
となります。
ただし、腎臓の機能が低下している方などでは、タンパク質摂取量を個別に調整する必要があります。
タンパク質を多く含む食品
- 肉
- 魚
- 卵
- 牛乳・ヨーグルト
- チーズ
- 豆腐
- 納豆
- 大豆製品
などがあります。
まずは食事から十分なタンパク質を摂ることを基本にしましょう。
食欲がなく食事量が少ない場合には、医師や管理栄養士などに相談しながらプロテインなどを補助的に利用する方法もあります。
② カルシウム
カルシウムは骨を構成する重要なミネラルです。
骨の強度を維持するために欠かせない栄養素ですが、カルシウムを大量に摂取すれば骨折が早く治るというわけではありません。
日本人の食事摂取基準では、成人の推奨量は性別や年齢によって異なります。
例えば18~74歳では、男性でおおむね750~800mg/日、女性で650mg/日程度が目安となります。
カルシウムを含む食品には、
- 牛乳
- ヨーグルト
- チーズ
- 小魚
- 豆腐
- 納豆
- 小松菜
などがあります。
牛乳200mLには約200mg程度のカルシウムが含まれています。
食事だけで不足している場合には、市販のカルシウムサプリメントを利用する方法もあります。
ただし、複数のサプリメントを併用するとカルシウムを重複して摂取することがあります。
「骨折したからカルシウムをたくさん飲もう」と考えるのではなく、まず現在の食事でどの程度摂取できているかを確認することが大切です。
③ ビタミンD
ビタミンDは、腸からのカルシウム吸収を助け、骨の健康維持に関係する重要な栄養素です。
成人のビタミンDの目安量は、1日9.0µg程度です。
ビタミンDを含む食品には、
- 鮭
- サバ
- イワシ
- きのこ類
- 卵黄
などがあります。
また、ビタミンDは日光を浴びることによって皮膚でも作られます。
高齢者や屋内で過ごす時間が長い方、食事量が少ない方では不足することがあります。
ビタミンDが不足している場合には、医師の判断で補充を行うことがあります。
市販のビタミンDサプリメントを使用する場合も、他のサプリメントとの重複に注意しましょう。
④ ビタミンK
ビタミンKも骨の健康維持に関係する栄養素です。
成人の目安量は、男女とも1日150µg程度とされています。
ビタミンKを多く含む食品には、
- 納豆
- 小松菜
- ほうれん草
- ブロッコリー
- キャベツ
などがあります。
特に納豆はビタミンKを豊富に含む食品です。
ただし、ワルファリンなどの抗凝固薬を服用している方は、ビタミンKの摂取について注意が必要です。
薬を服用している方は、自己判断でビタミンKのサプリメントを開始せず、主治医や薬剤師に相談してください。
⑤ マグネシウム
マグネシウムは、骨や筋肉、神経など、身体のさまざまな機能に関係するミネラルです。
成人では、男性でおおむね340~380mg/日、女性で270~290mg/日程度が一つの目安となります。
マグネシウムを含む食品には、
- アーモンドなどのナッツ類
- 大豆製品
- 海藻
- 玄米などの全粒穀物
- 魚類
などがあります。
ただし、一般的な食事をしている方が、骨折したからといって必ずマグネシウムのサプリメントを追加する必要があるわけではありません。
⑥ エネルギーもしっかり摂る
骨折後には「運動できないから太らないように食事を減らそう」と考える方もいます。
しかし、過度な食事制限には注意が必要です。
骨折の治癒にはエネルギーも必要です。
食事量が極端に少なくなると、タンパク質やビタミン、ミネラルなども不足しやすくなります。
特に高齢者では、骨折をきっかけに食欲が低下し、低栄養状態になることがあります。
「最近食事があまり食べられない」という場合は、サプリメントだけで解決しようとせず、医師や管理栄養士などに相談しましょう。
骨折後に意識したい栄養素一覧
| 栄養素 | 1日の目安 | 主な食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 体重1kgあたり1.0~1.2g程度を目安 | 肉・魚・卵・乳製品・大豆 |
| カルシウム | 男性750~800mg、女性650mg程度 | 牛乳・乳製品・小魚・大豆 |
| ビタミンD | 9.0µg程度 | 魚・きのこ・卵黄 |
| ビタミンK | 150µg程度 | 納豆・緑色野菜 |
| マグネシウム | 男性340~380mg、女性270~290mg程度 | ナッツ・大豆・海藻 |
※上記は成人の一般的な摂取量の目安です。年齢、性別、腎機能、服薬状況、食事内容などによって必要量は異なります。また、これらの量を摂取すれば骨折が通常より早く治ることを保証するものではありません。
市販の骨折サプリメントは何を選べばいい?
ドラッグストアやインターネットでは、「骨を丈夫にする」「骨の健康をサポートする」といったサプリメントが数多く販売されています。
しかし、商品名だけで選ぶのはおすすめできません。
選ぶときには、まず成分表示を確認することが大切です。
例えば、
- カルシウム
- ビタミンD
- ビタミンK
- マグネシウム
などが含まれているかを確認します。
ただし、成分が多ければ多いほど優れているわけではありません。
複数の商品を同時に使用すると、カルシウムやビタミンDなどを重複して摂取してしまうことがあります。
また、サプリメントは医薬品ではありません。
「骨折を治療する」「骨折を早く治す」といった目的で医師の治療を置き換えるものではないことを理解しておきましょう。
サプリメントより食事が基本
骨折後の栄養管理では、まず食事を整えることが基本です。
例えば、
主食+主菜+副菜+乳製品
を意識すると、さまざまな栄養素を摂取しやすくなります。
主食
- ご飯
- パン
- 麺類
など。
主菜
- 肉
- 魚
- 卵
- 豆腐
- 納豆
など。
副菜
- 小松菜
- ブロッコリー
- ほうれん草
- 海藻
- きのこ
など。
乳製品
- 牛乳
- ヨーグルト
- チーズ
など。
魚を食べればタンパク質とビタミンDを摂取できます。
乳製品を取り入れればカルシウムを補いやすくなります。
納豆や緑色野菜を取り入れれば、ビタミンKやマグネシウムなども摂取できます。
このように、特定のサプリメント1種類に頼るのではなく、さまざまな食品を組み合わせることが大切です。
骨折後に避けたい生活習慣
骨折の治癒には栄養だけでなく、生活習慣も関係します。
喫煙
喫煙は骨の血流や骨癒合に悪影響を及ぼす可能性があります。
骨折後はできるだけ禁煙することをおすすめします。
過度な飲酒
過度な飲酒は骨の健康や転倒リスクなどにも影響します。
骨折後は飲酒量を控えるようにしましょう。
自己判断で固定を外す
「痛みがなくなったから」といって、ギプスや装具を自己判断で外してはいけません。
骨折部が十分に安定していない状態で負荷をかけると、骨折部のずれや治癒の遅れにつながる可能性があります。
痛みを我慢して運動する
リハビリテーションは重要ですが、開始時期や運動量は骨折の種類によって異なります。
医師や理学療法士の指示に従って進めることが大切です。
サプリメントを飲む前に医師へ相談したほうがよい人
以下に該当する方は、自己判断でサプリメントを開始する前に医師や薬剤師へ相談することをおすすめします。
- 腎臓の病気がある
- 肝臓の病気がある
- 骨粗鬆症の治療薬を使用している
- 抗凝固薬を服用している
- 複数の薬を服用している
- 食事制限がある
- 妊娠中・授乳中
- 複数のサプリメントを使用している
特にカルシウムやビタミンDは、必要以上に摂取すればよいわけではありません。
「骨折したから」という理由だけで、大量のサプリメントを摂取することは避けましょう。
骨折がなかなか治らない場合は?
「サプリメントを飲んでいるのに骨がつかない」と感じる場合、栄養不足以外の原因が隠れている可能性があります。
骨折部のずれ、固定状態、血流、感染、喫煙、糖尿病、骨粗鬆症など、さまざまな要因が骨の治癒に影響します。
また、骨折の種類や部位によっても、治癒に必要な期間は大きく異なります。
痛みが長期間続く、腫れが改善しない、レントゲンで骨癒合が進んでいないと言われたなどの場合には、サプリメントを増やすのではなく、担当医に相談しましょう。
「軽い転倒で骨折した」場合は骨粗鬆症にも注意
特に高齢者では、転倒などの比較的軽い外力で骨折した場合、骨粗鬆症が隠れている可能性があります。
例えば、
- 手首を軽く転んで骨折した
- 背中や腰の痛みが続いている
- 軽い転倒で肋骨を骨折した
- 転倒して股関節周辺を骨折した
- 過去に骨折を繰り返している
といった場合には注意が必要です。
骨折を治すだけでなく、「なぜ骨折したのか」を調べることも重要です。
骨粗鬆症がある場合には、食事やサプリメントだけではなく、必要に応じて薬による治療を行うことで、将来の骨折を予防できる可能性があります。
骨折を早く治すために大切な7つのポイント
最後に、骨折後に意識したいポイントをまとめます。
1.医師の指示に従って適切に固定する
骨折部を安定させることは、骨癒合の基本です。
2.十分なタンパク質を摂る
目安として体重1kgあたり1.0~1.2g程度を意識しましょう。
3.カルシウムを不足させない
成人では1日650~800mg程度が一つの目安です。
4.ビタミンDを意識する
魚やきのこ類などから摂取しましょう。
5.バランスのよい食事をする
サプリメントだけに頼らず、さまざまな食品を組み合わせましょう。
6.禁煙する
喫煙習慣がある方は、骨折をきっかけに禁煙を検討しましょう。
7.適切な時期からリハビリを行う
骨折の状態に合わせて、医師や理学療法士の指示のもとで運動を進めましょう。
まとめ|骨折を早く治すためにサプリメントだけに頼らないことが大切
骨折をすると、「少しでも早く治したい」と考えるのは当然です。
カルシウム、ビタミンD、タンパク質、ビタミンK、マグネシウムなど、骨や筋肉の健康維持に関係する栄養素はあります。
しかし、特定の市販サプリメントを飲むだけで骨折が早く治ることが証明されているわけではありません。
大切なのは、まずバランスのよい食事を基本とし、必要に応じて不足している栄養素を補うことです。
特にタンパク質については、骨折後の栄養管理として体重1kgあたり1.0~1.2g程度を一つの目安として考えることができます。
カルシウムは成人でおおむね650~800mg/日、ビタミンDは9.0µg/日、ビタミンKは150µg/日程度が一般的な摂取量の目安となります。
ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、「この量を摂取すれば骨折が早く治る」という意味ではありません。
腎臓の病気がある方、薬を服用している方、複数のサプリメントを使用している方などは、自己判断でサプリメントを追加せず、医師や薬剤師に相談してください。
また、「軽い転倒で骨折した」「骨折を繰り返している」という方では、骨粗鬆症が隠れている可能性があります。
骨折を治すことだけでなく、次の骨折を予防することも整形外科治療では重要です。
骨折後の治療や栄養について不安がある方は、自己判断でサプリメントを大量に摂取するのではなく、まず整形外科に相談しましょう。
適切な骨折治療、十分な栄養、適切なリハビリテーション、生活習慣の改善を組み合わせることが、骨折からの回復を支える基本です。




















